■消えてゆく伝統
検便
現在では機械によって流れ作業で行われているこれは、かつて人の手によってひとつひとつ丁寧に行われるものであった。
山田さんは、祖父から数えて三代目の検便士。自宅の作業場で、現在でもひっそりと検便の仕事を続けている。

今、山田さんが守ってきた検便の伝統が、後継者不足で存廃の岐路に立たされている。
「この仕事はしんどい。若い人はおそらくやらんと思う」と語る表情には寂しさが漂う。
検便は便を練って素焼きの壺に入れ鼻を押しつけて思い切り匂いを吸い込むことで行われる。
一つの便にかける時間は15分。この時間の間に、山田さんの鼻は便の持ち主の 体調について、本人よりも詳しくなる。

山田さんはこの冬、体調を崩して仕事ができていないという。五十年以上、仲良く二人三脚で頑張ってきた一歳年下の妻アヤ子さんも同様だ。

厚生労働省は「継承者がいないために、なくなることは避けたい」という。
しかし、 「伝統芸能の指定や各種展示会、物産展などへの出品などでPRに努めているが、後進の育成まではなかなか難しい」という立場だ。

「便は生き物。人一人の便をとっても毎日の体調で匂いが変わる。
あだやおろそかにして良いもんではない」。
便の匂いを嗅ぎ続けてきた山田さんの言葉だけに重みがある。

機械を用いた検便は、人手を使う手法よりも短時間で、 大量の便を処理できることから人気だが、 山田さんはかたくなに機械式を拒み続けている。
「便は人生そのもの。若い人にも人手を使った検便の暖かみを知って貰いたいが、時代が変わったちゅうことですかねえ」という。
山田さんの仕事にかける情熱は燃えているが、われわれは祖先が築いた伝統をまた一つ失いかけている。
→記事っぽい雰囲気が(・∀・)イイ!!

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